

お店の前で。加藤秀章さんとmitsuyoさん。
「いつかは自分の店を持ちたい」。美容師なら少しでも考えたことがあるのではないでしょうか。
近年は20代で独立開業する人も増えています。
今回紹介するHeimiliのオーナー・加藤秀章さんは、50歳を前に開業。「直感で生きてきたので、長年の夢が叶った……とは言えないんですけれど」とオープンまでの道のりや、今後の展望について率直に今の気持ちを語ってくれました。

明確な目標ではなかったけれど、面白そうな方を選んだら“いつか”が叶った
─── ご自身のお店を持つまでに、2店舗を経ています。いつ、独立を意識されましたか。
音楽を聴きながら働きたいと思って美容師になったので、人生設計について深く考えてきませんでした。こっちのほうが面白そうかなと直感で動いてきたんです。
最初に勤めたのは表参道にあるZACCでした。カリスマ美容師ブームを作ってきたサロンのひとつですし、社長をはじめ多くの先輩方からたくさん学ぶことがありました。ふらふらしている僕を受け入れてくれる心の広さがあり、ある程度自由にやらせてもらえる部分も多くあったので、「独立したい」という気持ちがわいてくることもほとんどありませんでした。
ZACCを辞めたきっかけは、当時、店長だった和野(陽介)さんが独立することになり、「一緒にやらないか」と誘われたからです。僕は副店長だったので、和野さんと2人で話す機会も多く、信頼関係が築けていたこともありますが、「面白そう」と思ったのが一番の理由かもしれません。振り返ってみれば、その前年に子どもが生まれ、僕も40歳になる節目でもあったので、いい機会だったんだと思います。
─── 2018年から和野さんが立ち上げた「Elilume from ZACC」に参加して、心境の変化があったのでしょうか。
内装や営業中にかける音楽など任せてもらえることが増え、こうしたらいいのではと自分の意見も自由に言えるようになりました。
一番よかったのは、妻のmitsuyoも同じサロンで働くようになったことです。産休・育休から復帰し、この先どう働いていくかを考えていたところだったので、同じ職場であればフォローがしやすく安心でした。Elilumeで働きはじめてから、「いつか夫婦で店を持つのもいいかも」と思うようになりましたね。

「子育てと仕事を両立できる環境が整い、より自分らしく働けるのがうれしいですね。同世代のお客さまが多く、ライフスタイルや年齢に合わせた提案を心がけています。何か一つに特化しているわけではないけれど、あえて言うなら“大人推し”でしょうか」(mitsuyoさん)
ネット社会のなか、リアルなコミュニケーションが大切


↑2人の趣味を反映したインテリアが素敵。お客さまから「飾って」といただいたものもあるそう。
─── 目の前には公園があり、5分ほど歩けば新宿御苑があります。表参道や銀座ではなく、新宿御苑のエリアにした決め手は?
前サロンのElilumeは目の前が新宿御苑で、四季を感じられる場所にあります。7年ほど働いてきて、新宿御苑のエリアを好きになっていたこともありますし、自宅から電車で1本なので通勤しやすいのも理由です。四谷三丁目や代々木あたりも歩いてみたのですが、しっくりこなくて。やっぱり新宿御苑がいいねと2人の意見が一致したので、新宿三丁目から新宿御苑のエリアに絞りました。 ただ、なかなか物件がなくて、1年以上は探しましたよ。これもお客さまからのアドバイスだったのですが、出店したいエリアの不動産屋をくまなく回って名刺を置いてくること、1回だけでなく、時々顔を出して「どうですか?」と聞くことをしたほうがいいと言われて実践しました。人見知りですが、そうも言っていられないので……。
この場所に決まったのは、奇跡的な巡り合わせだと思っています。不動産屋の店先で、2日前にはなかった物件のチラシを偶然見つけたんです。飲食不可だったので美容室も難しいだろうと思いましたが、ダメもとで問い合わせました。ほかにも内見予定の方がいましたが、なんとか僕らに決まりました。「一昨日見たから」と通り過ぎていたら出合えなかった物件です。こまめに足を運び、不動産屋さんとコミュニケーションをとっていたのが、本当によかったと思います。
サロンが第2の「居場所」になれたらうれしい

─── 大きな窓があり、開放感のあるサロンですね。シャンプースペースは半個室になっているのでリラックスできそうです。いたるところに絵を飾っているのは、こだわりですか?
mitsuyoとキューバに行ったときに「いつか店を持ったら飾りたいね」と話していた絵です。内見をしたときに、「あの絵に合うだろうな」と感じたのも、この場所でやりたいと強く思った理由のひとつかもしれません。
鏡や椅子は新しく購入したものですが、インテリアは家にあったものがほとんどなんです。絵もそうですし、奥にあるキャビネットはmitsuyoがひとり暮らしをしていたときに購入したものです。
ZACCの先輩が新居でいい音質で音楽を聴きたいからスピーカーを探してくれないかと頼まれて選んだものです。いつか先輩から譲ってもらおうと思って(笑)僕好みのものを選んだので、サロンにもぴったり。好きな音楽をいいスピーカーで流しながら仕事をするのは贅沢な時間です。

─── オープンから約半年ですが、加藤さんにとってサロンはどんな存在になっていますか?
店名の「Heimili」は、アイスランド語で「家」や「帰る場所」という意味です。お客さまにとっても、自分たちにとっても家以外の居場所になればいいなと思っているんです。
先日、営業後にmitsuyoと子どもと3人で軽食をとりながら、おしゃべりをしました。それがとってもいい時間で、子どもが「楽しい人〜?」と聞いてきて、3人で「はーい」と手を挙げたんですよ。まさに、僕らの居場所になっているなと実感できる出来事でした。 僕ら夫婦は10年以上一緒に過ごすうちに会話が減っていましたが、2人で店をはじめてからまた増えました。経営のことで相談しなければいけないだけでなく、お客さまとの会話を通じて自然に情報を共有できるんです。「そんなことがあったんだ」と、お客さまを介して知ることもあって面白いですよ。
お客さまにとっても、家や職場とは違う「居場所」になってほしいので、くつろげるように座席の間隔も広くしています。4席作る予定でしたが、3席にして正解でした。
施術中に身に着けるクロスにもこだわっています。お客さまが不快にならないよう、蒸れにくいとか、カットした髪がつかないとか。僕ら美容師側も使いやすいことが大切なので、どちらも両立できるクロスは重宝しています。

商品番号 00709 完全制電 立体裁断カットクロス
前で留めるデザインのカットクロスは、

商品番号 12203 耐久撥水カラークロス
透湿性のある撥水加工のカラーリングクロス。「蒸れにくいので、

商品番号 00778カット&コールドクロス丸ヨーク
衿まわりのヨークはパーマ液の浸透を防ぐ完全防水生地。

商品番号 00703 シャンプークロス ベラ付
首にあたる部分にパイピングを施した、

地域に愛される美容室を目指したい
─── スタートしたばかりですが、今後の展望を教えて下さい。
おかげさまで既存のお客さまが継続していらしてくれています。さらに地域の人たちからも愛される美容室になれたらと考えています。 このあたりは、飲食店など長年経営されている方が多く、地元密着型。僕もまわりのお店の方たちとつながりを持とうと、近所の床屋に通っています。町内の情報を色々と教えてくれて、行きつけのもつ焼き屋さんも紹介してくれました。そこからまたつながりができて、さらに広がっていきそうです。
店先に置いてある看板には電話番号しか書いていません。ホームページやインスタグラムをまだ開設していないからというのもありますが、近所の方に気軽に電話をしてほしいという思いがあります。今はネット予約が主流ですが、「今日、空いてます?」「明日なんですけど……」と、電話でぜひ相談してください。
(インタビュー2026年10月 加藤秀章氏)

Heimili(ヘイミリ)
東京都新宿区新宿1-29-16 サンモール第2マンション101
TEL.070‐5219-0512
営業時間 10:00〜20:00/木・金曜10:00〜21:00
不定休
新宿御苑徒歩4分、新宿三丁目徒歩8分
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